本年度の目指す運動

一般社団法人 網走青年会議所2019年度 理事長所信

一般社団法人 網走青年会議所第68代 理事長 近藤 憲治

1、はじめに

人生は旅。

山があり、谷があり、1日として同じ日は無く、一期一会を重ねる旅。

喜びや楽しさがある反面、幾たびの悲しみや困難にも見舞われます。

 

私にとっては多くの人との出会いとたくさんの温かな支えで生かされていることに気付き、感謝の気持ちを重ねていく旅でもあります。

遠く離れた名古屋で生まれ、京都で学生時代を過ごし、名古屋で社会人としての歩みを始め、転職を機に北海道へ。札幌、釧路、網走と現場を歩き、ここ網走で自らの人生を賭けようと、未知の世界へと飛び込みました。それから8年。新聞記者として暮らした2年半を加えれば10年を超える時間を網走で過ごし、人生で2番目に長い時間を過ごした場所こそが網走です。多感な20代後半から30代を網走の街とともに過ごし、この網走に根付きたい、と思ったきっかけ。それは、この地に暮らす人々との出会いと触れ合いでした。

 

網走を少しでも良い街にしたい。

網走の魅力を伝えたい。

網走の子どもたちに大きな夢を見せたい。

網走の歴史をまちの力に転化したい。

網走に良きリーダーを生み出したい。

 

そんな想いを行動で示す人々と数多く出会いました。今日になって思い返してみると、そんな想いをもって行動していた人たちのほとんどが、この網走青年会議所で成長を重ね巣立っていた人たち、または、今まさに経験を積み、力を蓄えつつある現役の会員でした。そんな網走青年会議所に私自身も2015年に入会し、網走の地から北海道、日本、そして世界の在り方を考え、行動を重ね、成長の機会をいただくに至り、青年会議所はリーダーを育て続ける場であるとの意を強くしています。地域から天下国家を語り、次世代のリーダーを育み、まちの未来を切り開いていく、唯一無二の青年組織は、地域に住み暮らすすべての人の宝であり、地域で長年果たしてきた、この役割は他の団体では決して取って代わることのできない重要な機能です。今を生きる現役会員の使命は、自らの成長と行動を通じて、この青年会議所を次の世代へと手渡していくことにあります。

 

2、ポスト2020年を見据え、希望溢れる網走の未来を描き、行動する

網走市人口ビジョンによると、網走の人口は2040年には3万人となり、1947年の市政施行当時とほぼ同水準となります。巷で聞かれる論調は、人口減少イコール悪、人口の少ない街イコール不幸、という隠れた前提があるわけですが、本来、網走の特性に沿った適正な人口規模があるはずで、住民が心地よく暮らせる規模、言い換えれば、住民幸福度の高い街をいかに創出していくか、という点をまちづくりの前提とすべきです。幸福度の高い地域に人は集まり、さらに将来不安の解消から子どもを産み育てようと考える若年層も増加し、結果的に少子化も解消されていくものと考えます。近年の網走を取り巻く高齢化は、年齢を理由に個人や組織、社会の変化や成長を止めてしまうという負の側面があります。性別や年齢に問われること無く、それぞれの人が柔軟に未来を描き、行動を起こし続ける社会を築く必要があり、青年会議所および青年会議所のメンバーは常に1歩先を歩き、より良き地域の姿を描き続けていかなければなりません。

本年は、平成最後の年を迎えますが、現実は少子高齢化による人口減少と超高齢化による社会保障費の増大というかつてない危機に向き合なければならない1年でもあります。さらにその先の時代を形作る私たち責任世代は、ポスト2020年に目を向けなければなりません。特に本年は消費税の10%化、働き方改革、そして、オリンピック特需の終焉という日本経済に影響を及ぼす変化が立て続けに起きます。地方創生と東京オリンピック・パラリンピックはいわば国策として進められており、地方もその恩恵を得ているケースも確かにあります。しかし、その原資は国家予算であり、財政という視点でみると社会保障費の増大など危うさもはらんでおり、ポスト2020年には国と地方の関係性が変わっていく、すなわち、より地方が自立をせざるを得なくなる時代を迎えるのは必至です。ポスト2020年を見据えた自立した自治体経営、自立した地域内産業、自立した地域経済を目指していく必要があります。住民の意識においても同様で、「誰がやってくれるか」から「私たちがやろう」へと精神面の自立も不可欠です。

青年会議所は政治を動かし、社会をより良く変えていく政動社変の団体です。青年会議所が政治を動かし地域をより良く変えていくというプロセスは全国各地で住民の共感を集めており、引き続き、政策の立案実行による地域課題の解決に挑んでいきます。あわせて、国の在り方を定める憲法を未来志向でより良きものに変えていく運動にも積極的に関与していきます。一方、青年会議所の会員は地域経済の担い手でもあります。経営者、従業員、起業家など様々なスタイルがありますが、すべての会員が何らかの形で地域経済に関わっており、地域の経済をどう回していくか、どう回ることが地域にとって良いことか、を意識しなければなりません。日本には古くから「世の為、人の為が自分の為」という考え方があります。「自らの経営やビジネス、経済活動が地域にどんな変化をもたらせるか」という思考を備えた青年経済人をさらに増やし、政治と経済の両輪で網走のまちを前へと進めていこう。

 

3、地域課題の解決に向けた指標と思考

では、より良い網走とはどのようなまちの姿を指すのでしょうか。そこで、国連が定めるSDGs(持続可能な開発目標)の17項目から指標を設定することが有効です。地域特性にあった持続可能な社会の在り方を模索し、具体的な指標を定めながら、地域全体を巻き込み、多様なパートナーとの連携協働で全体最適を心掛けながら事業を確立していく必要があります。SDGsは自らのビジネスや地域社会をより良くしていくための視点も数多く含んでいます。小規模な社会実験を繰り返し、その変化を検証しながら常に新しい方法を見つけ出し、その中から普遍的な仕組みを確立します。

経済発展と社会課題の解決のためにSociety5.0の概念にも理解を深める必要があります。Society5.0とは、AI、IoT、ロボット、シェアリングによって現実空間とサイバー空間を融合させた「人間中心の社会」とされています。Society5.0の価値は、現実空間において誰もがつながる豊かな体験や共有する喜びを得られることにあります。日常生活において、特別なスキルを必要とせず、会話や行動とサイバー空間がつながり、AIやロボットが現実社会を補完することで、社会が人間に寄り添う時代を迎えます。そのような時代においては競争や独占所有よりも共助や共創が重要視され、人間性やホスピタリティが新たな価値を生みだします。例えば、ICTを活用した民泊や地域のつながりの広がりは本来日本人が有していた「助け合い」の概念の今日化とも言えます。これまでAIやIoTの恩恵をあまり受けてこなかったローカルな物流、建設、医療、介護、農業といった地域内の労働集約型・顧客対面型ビジネスは今後、大幅な自動化や生産性の向上を成し遂げる可能性が極めて高いと見込まれていることを踏まえ、地域に根を張り、ローカルファーストで新たな価値を創造しよう。

 

4、網走に住み暮らす誇りと喜びをブランドに

網走の未来を切り開くためには、自らが住み暮らす人々との心に網走を愛する気持ちが不可欠です。歴史を知り、文化に触れ、日常を生きる中でも網走を愛する気持ちは育まれていきますが、あわせて、世界の中での網走、すなわち、他者から自らの地域がどう見られているか、という意識の相対化があれば、自らの地域を愛する気持ちや誇りはより一層高まります。かつては、地方の活性化は大消費地としての東京を見ていました。しかし、LCC(ローコストキャリア、低価格航空会社)の台頭やSNS(ソーシャルネットワーキングシステム)の定着で地方が直接世界とつながることのできる時代を迎えました。さらに、2019年のラグビーワールドカップや2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた事前合宿の受け入れなどで網走が直接世界と触れ合う機会も今後増えてきます。様々な機会を捉えて世界の中の網走という意識と網走を愛する心を地域の中に広げていこう。

地域のブランドとは何でしょうか。イメージは人それぞれですが地名を聞いてその地の具体的な何かを思い浮かべることができ、その意識にポジティブな印象を伴うのが地域のブランドです。では、地域のブランドはどう高まっていくのでしょうか。地域をPRするプロモーションが様々な形で行われていますが、果たして網走のブランドは高まってきているのでしょうか。網走には刑務所、流氷など様々な要素がありますが、詰まるところ、最も訴求力があるのは、実は日常を暮らす人々がその豊かさを実感をもって伝える言葉です。日常の暮らしの豊かさを一人ひとりの住民が語り出し、様々な形で発信できるようになれば、それは確実に網走のブランドとなっていきます。

 

5、リーダーを育てる

青年会議所は世界中で時代の変化に即し、新たな時代を切り開くリーダーを育てています。日本においては質の高い初等中等教育があっても、高等教育、大学教育の質的変化が遅れており、結果として、新しい時代に必要とされる課題発見能力や様々な要素を組み合わせて解決策を導き出す能力を育めていません。地域の高等教育と連携し、未来を担う人材を育てるとともに、組織内においても会員個々の研鑽を促し、地域のリーダーとなれるよう成長の機会を相互に与え合える環境を創出しなければなりません。青年会議所の人材育成は、教える側と教えられる側を固定化せずに、単年度制で様々な役割を果たすことで、会員相互が学び合い、育て合うところに価値があります。あらゆる会員がそれぞれの学びと成長を共有できる人材育成の在り方を確立します。

青年会議所は世界117か国で約16万人、日本全国695地域で約3万6千人の同世代が活動しています。この強大なネットワークこそが地域を変える力であり、世界各国、日本全国で繰り広げられている、社会や地域をより良く変えようという挑戦を見てみると、どこかに必ずヒントがあります。このネットワークを活用して地域課題の解決を導き出すサイクルを確立するとともに、網走の潜在的価値に共感してくれている外部の様々なファクター(主体)とも積極的に連携し、人材を育てていこう。

 

6、北方領土問題を日ロ関係深化の契機に

北方領土がソ連に不法占拠されて以来、70年以上の年月が流れました。網走青年会議所として北方領土返還要求運動を連綿と受け継いできた歴史は誇るものであり、今後も問題を風化させず、いかに解決へと導くかという意志を広げていくことが肝要です。元島民の方々も高齢化し、4島との自由往来を願う切なる気持ちに耳を傾けると、より柔軟かつ新しい視点での解決策があっても良いのではないかとやり切れない想いがこみ上げます。領土問題は外交問題ですが、相手がおり、ロシアとどう向き合うか、という視点が今や不可欠です。一昨年の安倍晋三首相とプーチン大統領の会談を経て日本とロシアの2国間関係は急速に変化を遂げています。北方領土問題においては、網走の地政学的価値に意識を持つことも大切です。網走は極東ロシア・サハリンや北方領土の択捉島、国後島を100~400キロ圏内に収め、港湾や空港を擁しています。特に択捉島や国後島に対しては根室や釧路からよりも近接した良好な環境にあります。網走青年会議所は永らく北方領土返還要求運動を推進してきました。その歴史を礎とした上で、網走とロシアの関係深化から北方領土問題を動かしていく、北方領土問題が動けば網走にも様々な変化が訪れる-という未来志向の視点で問題解決に挑もう。

 

7、災害に備える~まちづくりの基礎~

 2018年9月6日、北海道胆振東部地震が発生し、死者41人、負傷者681人、住宅の全半壊のほか、北海道電力苫東厚真火力発電所の火災に端を発した全道規模の停電という多大な被害がもたらされました。網走でも全域で停電が発生し、避難所に携帯電話の充電先を求める市民や行き場を失った観光客が押し寄せました。昨今、集中豪雨や台風の襲来、豪雪など、災害が少ないと言われてきた網走でも様々な災害に見舞われており、発災時の対応を柔軟かつスピーディーに行うためにもその地に住み暮らす人々の備えが大切です。青年会議所は全国規模で災害の対応や支援を行ってきたネットワークやノウハウを有しているほか、地域においては、各会員が事業を営み、まちに根差して生活しており、地域の実態や実情を肌感覚で理解していることから、災害発生時にネットワークとマンパワーを活かす素地は既に出来上がっています。災害対応や防災は、自分たちのまちは自分たちで守るというまちづくりの基本でもあります。行政機関や関係諸団体との平時から情報交換を行い、災害発生時の初動対応や物資の供給などで効果的な活動を展開できるように準備しておく必要があります。「備えよ、常に」の意識で、会員が防災意識を高め、日頃から地域内コミュニティに積極的に関与する動機づけも不可欠です。

 

8、運動の基盤たる運営に変化を

運営無き運動は存在しません。青年会議所運動のひとづくりやまちづくりといった運動は、確固たる運営があって初めて所期の目的を成し遂げられます。会員が心をひとつにして運動に取り組むためにも、組織として確実かつ丁寧な運営が不可欠です。あわせて、人間同士のつながりを重視した運営の良いところを大切にしつつ、技術革新著しいICTを活用した効率的な運営にも柔軟な思考で臨むべきです。様々な業種、働き方の会員を迎えるなかで組織運営の在り方も変化すべき時を迎えています。青年会議所の持つ人材育成機能を維持しながら、スピード感を備えた、内容の濃い運営の在り方を見い出す必要があります。青年会議所に寄せられる地域の期待が大きい分、会員の言動は周りの人々の耳目を集めます。故に会員は襟を正し、コンプライアンス意識を向上させ、地域のリーダーにふさわしい立ち居振る舞いを身に付けていかなければなりません。企業経営において企業価値を高める広報が既に基本となっていますが、SNSの台頭もあり、無差別に広く伝えるだけの一方通行型、大量伝達型の広報には限界があることも明らかになってきました。そこで、大事なのが情報の受け手の共感を呼び、考察や行動の機会へとつなげる広報です。青年会議所運動の情報に触れた側が自らの行動や考え方を変えれば、それは運動の所期の目的を達していることにもなります。広報は意識変革の礎であり、運動の目的達成のための要素です

 

9、拡大~地域の信頼を得て、さらなる組織を次の世代に~

新たな会員を迎え入れる拡大は、JCの根幹である市民意識変革運動の成果の最たるものです。まだ見ぬ素晴らしい仲間と互いに成長する機会を得ることは組織にも新たな活力をもたらし、地域をより良く変化させていく力を高めることになります。現在の網走青年会議所において女性会員が少ないという点は厳然たる事実ですが、世界に目を広げると、海外の青年会議所では女性が枢要なポジションで活躍しています。日本国内においても女性の活躍が広がる中で、網走青年会議所も女性が学び成長できる場を提供していく必要があります。あるべき青年会議所の姿を議論し、新たな組織像を確立する必要があります。拡大につなげるためにもあらゆる事業で地域との協働や連携を意識し、地域内の青年層との接点を増やすべきです。JCの運動は現役会員が形作るものでありますが、これまでの経験や経過を学ばせていただくのに、OBOGの存在は尊い財産と言えます。OBOGと現役が様々な形で有機的に連携し、地域を前に進める力をより一層強めていきます。

 

10、終わりに

あなたは、なぜJCをやっていますか。

人類の歴史は社会をより良く変革しようとする意志、知恵、努力、工夫の積み重ねです。

網走に本格的に人が住み始めたのが明治18年。その後、網走監獄の設置や各種行政庁の開設、日本各地からの移民の流入により、今日の網走が築かれました。私たちは、その歴史の上に、今を生きています。過酷な環境の中、自らの子孫の、そして地域の未来を見据えて、労苦を重ねてきた先人たちに想いを馳せれば、今ここで立ち止まっているわけにはいきません。私たちは次の世代に何が残してあげられるのでしょうか。JCという道具を十二分に使って、JCでしかできないことに挑み、この網走の地をより良い地域へと変化させていくことこそが、今を生きる私たちの使命。

私たち、一人ひとりが網走の、北海道の、そして、日本の未来を創る当事者なのです。

今を大切に生きよう。

他者を慮ろう。

未来を見据えて、次世代のために。